価値共創コミュニティの始め方

 

なぜ、価値共創コミュニティの始め方かと言うと

私がこういうのがあったらいいなと思っている「価値共創コミュニティのエコシステム」をつくるには多くの価値共創コミュニティが必要なのです。そのためには、誰でも簡単に始められるような方法があると良いのですが、それができたかもなのです。
当初は、「企業内でグループコーチングを広めたいがなかなかうまくいかない」という声を聞いて、それであれば、新入社員が入って来るタイミングで、その育成担当になる人にファシリができるようになってもらうというのはどうだろうという意図で、ありえる楽考内で12月に募集をかけて、土曜6時、水曜6時の2チームでトライアルを始めました。
取り組んだ手応えがすぐにありました。これは、ファシリテーターの育成というよりは、コミュニティオーナーとしての意識を育み、社内にオーナーシップ、リーダーシップを持っている人をたくさん輩出する施策になるかもという予感がして、わくわくしてきました。
そういう話をしていたら、やってみたいという声があがり、土曜7時、土曜8時、火曜7時と広がって30人近くの方がとりくんでくれるようになりました。そして3月12日から始まったハッピーデーウィークに、メンバーの大半がイベントを主催してくれたのです。
 

価値共創コミュニティとは何か

 通常のビジネスでは、価値を提供する側と受け取る(顧客)側の分断があるのではないかと思います。今回共有したいのはこの境界を外へ外へと動かしてゆくことです。お客様と「お客様のお客様」に一緒になって価値をつくってゆくことです。
野中先生の『ワイズカンパニー』で紹介されているエーザイの場合ではこうです。
製薬会社と呼ばれるカテゴリーの会社では通常顧客は医師です。患者さんは顧客の顧客です。医師には自社の薬のことを知ってもらおうとします。エーザイでは、患者さんのところに行きます。エーザイは認知症と癌に集中されています。認知症の患者さんが幸せな日常を取り戻すことを目的にしています。その目的のもとでは、医師や医療関係者、患者さんのご家族はパートナー、仲間だと見ています。
立場、役割を超えてアイディアを出しあい、いいと思ったことを実践します。そして、うまくいったこと、いかなかったことを持ち寄って意見交換をしてゆきます。
エーザイの開発者の出発点は自分の母親が認知症になり、自分のことも思い出せないという悲しい状況をなんとかしたいと思ったことだったそうです。同じ様に社員の誰もが患者さんのところにいって現実に触れる(これをSECIモデルでは共同化と呼びます)ことで、一刻も早く楽になってもらいたいという思いで仕事をするようになります。エーザイでは、認知症の患者さんが幸せな日常を取り戻すことは、自社だけではできないので、医師や医療関係者、ご家族とエコシステムをつくってゆこうとされています。

なぜ、価値共創コミュニティなのか。

私は、仕事が楽しくない、意味価値を感じないことを生活のため、世間体のために仕方なく働いている人を減らしたいと思っています。なぜかというとそういう人は楽しそうじゃなく、不機嫌で優しくない。文句やぐちが多く一緒にいると暗い気持ちになります。いじめやハラスメントはこういう状況で発生する気がします。その人たちも好きでそうしているわけではないと思うのです。その人たちに「お金を払ってでもやりたいことなのに、ありがとうと言われてお金までもらえる。だから、もっとうまくなって役に立ちたい」という喜びや楽しさ満ちて働いているイメージが湧いただどうなるかな。そういう人が多い世の中って良さそうだな。その方がいいと思っちゃったんです。それで、TTPS勉強会に取り組んできました。
とはいえ、なかなかそう簡単にはいかないのですが、たまたまやってみたことが、再現性のある「グループコーチング」として形になりました。これはこれで効果があって、幸いなことに広がりつつあります。ただ、価値があるものを創り出すという点ではそれだけでは十分ではありませんでした。振り返りにもある種の「発達段階」があるのです。最初は、自分のできなかったことに注目し、事柄やタスク中心の振り返りになります。誰の何にが重要ですよと伝えてはいるのですが、わからない人がいます。
天国の食事、地獄の食事という寓話があるのですが、ご存知でしょうか?
同じように山盛りのごちそうがあります。ただ、自分だけで食べようとする地獄の人は食べられずに飢えていて不幸です。わかちあい食べさせあっている天国の人は幸せ、という話です。つまり、地獄になるか天国になるかは、環境のせいではなく、自分が環境をどのように見ているのかによるということです。難しいのは、知っていてもなかなか「自分だけでやる」ことから抜け出せないということです。

石工職人という寓話もあります。

注意が向く対象が、石を切る、積むという方法Howという人、教会をつくるという結果(What)という人、祈りを捧げて心が平和であるようにと目的(Why)という人についての話です。誰もが目的の重要性は知っています。それでも、やったことのないこと、未知のことに出会った時にはHowに囚われて、目的を見失いがちです。この目的の本質は「誰の何に役立つのか」ということではないかと考えています。いつもは子どもの笑顔に癒やされているのに、朝の忙しい時に、つい命令調になったり、できてないことを指摘したりして、やってしまったと嫌な気分になってしまうような感じです。
だからといって、「誰の何にが明確な目的をおいてください」と指示して実行してもらっても、あまり効果的ではありません。言われたことはできても、全体像を理解していないと次の行動ができず、また、指示を受けなければいけません。自律自転になるには、目的が自分ごと化している必要があります。車を運転していて、助手席の人に指示されて行った場所に、自分だけでは再度行けないのようなものです。手っ取り早く結果を出すだけなら、何も考えず、言われた通りにやればよいでしょう。それに対して、その人の視点視座があがって、そう見えるからそうするというようになるには時間がかかります。でも、自分で体験し、振り返り、構造化した場合は、別の状況にも応用できるようになるのでトータルでみると時間が短くなります。

自律型人才が求められているとよく聞かれます。

全員が経営者のように判断して動けるようにとも言われます。経営者の視座は、自分が最終決断者、後がないという立場になってみないとなかなか得られません。どうしたらいいですか?と他人に決めてもらうことはできないのが経営者です。そもそも自分の人生は、自分で決めるものなはずです。でも、親や先生の言うこと、社会の規範に従うのが当たり前になってしまうと自分で決められなくなってしまいます。
自分は長の器ではない、サポートの方が向いていると言って自分からリーダーシップを発揮しない人が少なからずいます。最初から長の器の人などほとんどいないのではないでしょうか。なんとかしたいことがあって、それが自分一人ではなんともならなくて、仕方なくいろんな人に協力してもらえるよう知恵を絞って動いてもらううちにだんだんできるようになってきたというのが実情ではないでしょうか。自分の会社の社長はできなくても、自分でコミュニティをつくることならできそうではないでしょうか?
その仕事がうまくできるためには、

2つ上のポジションで考えると良いとも言われます。

会社のマネジャーは上司や経営者に認められないとなれませんが、コミュニティのオーナーは、やると決めさえすれば今すぐなれます。サポートの方が向いていると思い込んでいる人でも、周囲の人全員が長であり、サポーターでもある、1人1リーダー、1プロマネ、2メンバーの入り組んだ場だったら受け入れてくれるでしょうか。
ただ、そうやって視座があがるだけではまだ足りないのです。やっているとわかりますが、人はお金や権限、指示などでは動いてくれません。特に優秀な人ほど、その人がやりたいと思わない限り動きません。目的、意義がその人の価値観に照らして共感するから動いてくれるのです。また、お客様の役に立ちたいと思っても、実はその人のことを知らないことに気づきます。自分でも自分についてわからないことだらけというのが人ではないでしょうか。顧客インタビューなどで聞いてわかることもあるのですが、自分でも自分がわかっていないのですから、嘘をついているわけではなくても、本当のところはわからないのです。それを一緒に関わることで理解してゆくために、このグループコーチングを考案したのです。なので、顧客とやると良いですよとお伝えしているのですが、それが実感をもって伝わるのにも時間がかかりました。
わかってしまえば、もう、そのようにしか見えなくなります。なぜ、今までわからなかったのだろうと不思議です。これがパラダイムと呼ばれるものです。パラダイムが違うと目の前にあっても、見えないし、聞こえないのです。コミュニティをつくるということは、参加を通じてパラダイムを理解してもらう時間をもつということです。会社や組織の中で、成果を上げてもらうということは、パラダイムを理解し、パラダイムを使いこなせるようになるということでもあります。
だから、新入社員や異動になったりして新しい環境になって、今まで培ってきたパラダイムが役に立たなくなり、新しいパラダイムに馴染むまで応援してくれる社内のコミュニティがあると助かるのですが、成果主義のなか多くの企業が社内コミュニティを失ってしまいました。心理的安全性が話題になるのは、そのせいではないかという気がしています。挑戦して失敗すれば傷つきます。傷つかないようにしたら何もできません。傷ついたら癒す仕組みがなければ、ナイチンゲールがいない戦場と同じで、助かる人も助からず人がどんどん倒れていっていまいます。
グループコーチングが顧客を理解し、顧客が自分でも気づいていなかった困っていることに的確な提案をするという場になっている人の振り返りは、聞いていておもしろいのです。そして、学びがあります。振り返りそのものが毎週の人生劇場を最前列で見ている感じになります。
 
グループコーチングは誰がやっても60点くらいは出せるようにデザインできていると感じています。なので、導入のハードルは下がりました。ただ、60点では、やった方がいいことで終わり、次々に試される方法の一つで終わります。組織に習慣として定着するには、おもしろい、楽しい、嬉しい、もっとうまくなりたいと技量があがり続け、感動レベルに到達しているファシリテーターが何人かいる必要があります。そのレベルのファシリテーターになるには、多くの要素があり、人によっては時間がかかります。時間がかかるとそれが壁になって、自分には向いていないと諦める人がそれだけ増えます。
すごい人じゃないとできないと思われてしまう施策は広げるのが難しいです。あの人にできるなら私にもできると思われる方が広がります。ただ、始めやすいだけでは、すぐに飽きられます。すぐに始められるだけでなく、やればやるほど課題が見えてきて、クリアするとレベルアップして、より難しい課題が見えてくるというサイクルに入ってしまうデザインが必要です。
私がキャリアをスタートしたリクルートは、このデザインがうまかった。新人アルバイトでも、必要な行動をすれば初日でも受注してしまう人がいました。一方で、日本の採用のあり方そのものを変えてしまうような大きなプロジェクトをお客様から絶大なる信頼を得てリードするレベルまであって、上には上があるなー、あんな仕事したいなー、レベルアップしたい、どうやったらなれるんだろうと思わせてくれました。
そういう組織文化になる仕組みが張り巡らされ、しかも、それが進化し続けています。
ただ、そういう組織にしたいと思って周囲に話しても、初めて聞いた人には意味が伝わらず、変な人と思われます。まず、ここで挫折します。
勇気を出して一歩踏み出しても結果が思うように出なければ、失敗と思い、自分には無理だったと諦めてしまいます。皆さんの会社、家庭、個人において始めたものの途中で終わったというものをいくつも思い出せるのではないでしょうか。
だから、よほど信念を持っている人でなければ、あまたの挫折を乗り越えて突破段階になんか到達できないと思うことでしょう。「時間がかかるのは、やったことのない難しいことに挑戦しているのだから当然だよ」と応援してくれる親友、家族のようなコミュニティがあったらどうでしょう?
普通の人でもできそうではないでしょうか?
時間の壁を越える鍵は、自分の子どものように、心から成功を願う人を応援するためにファシリをし、応援しあう価値共創コミュニティをつくっているという人が集まって学びあうエコシステムにあります。周囲にそういう人がたくさんいて、それが当たり前という状況です。それが1人一長、1プロマネ、2メンバーの入り組んだ場です。
 
 
それができそうな手応えを感じています。
自分と他者、他部署、他社と私たちとあの人たちを隔てる境界が外へ外へと広がってゆく人が出始めました。ようやく、パラダイムを共有する人が増えてくるようになってきたのです!
 

具体的にどうやるの?

やることは週イチ1時間12週の取り組みです。
 
最初の問いは「新入社員の自分に、今の自分から一つだけメッセージするとしたら何ですか?それは、何故ですか?です。そこから始まって、最終的には、自分のコミュニティの理念、行動原則、ストーリーをつくってゆきます。
 
実際に「自分を主語にストーリーを書く」ところを一緒にやってみませんか?
 
 
 
 
 
全体を通しての流れ2022/3/28 8:462022/3/31 8:54