苦節17年でユニコーン化した「ローコード開発」OutSystemsの歴史

 
everything possible / Shutterstock.com
シリコンバレーには、「時代を先取りしすぎることは、間違うことに等しい」という格言がある。しかし、プログラム開発プラットフォーム「OutSystems」のCEO、Paulo Rosado は創業から17年をかけてユニコーン企業の仲間入りを果たし、この格言が誤りであることを証明した。
同社の売上高は1億ドル以上で70%の成長率を誇る。直近の資金調達ラウンドでの評価額は10億ドル(約1097億円)を超えた。
OutSystemsは6月5日、「KKR」と「ゴールドマン・サックス」から総額3億6000万ドル(約395億円)を調達したことを明らかにした。同社によると、評価額は10億ドルを大幅に上回ったという。ユニコーン企業の多くが設立から短期間で評価額10億ドルを達成する中、OutSystemsは異色の存在だと言える。
同社は企業が独自のアプリケーションを開発する支援をしているが、Rosadoが「時代を13年先取りしすぎた」と話す通り、低迷期が長く続いた。
OutSystemsは、2001年にポルトガルで設立された。同社は、アプリケーションをオンプレミスからクラウドへ移行する企業向けに、ローコード開発(最小限のコーディング)プラットフォームを提供している。Rosadoによると、これまで関わった企業の多くが古いテクノロジーで開発されたアプリケーションを移行するのに平均4〜6年を要していたが、OutSystemsのサービスを利用すればわずか18カ月に短縮することが可能だという。
OutSystemsは、これまでに2005と2007年にVCから資金を調達している。その時点で既に設立から6年が過ぎていたが、そこからしばらく苦労が続いたという。「我々は、企業のソフトウェア開発方法が間違っていると確信していた。しかし、長い間、我々のプロダクトは風変りなものだと思われていた」とRosadoは話す。
OutSystemsは、多くの企業がまだ問題視していなかった課題を解決しようとしていたのだ。既存顧客の継続率は高く、新規顧客は熱烈な支持者になってくれたが、MuleSoftやスラックのように口コミで急速に広まることはなく、数年は成長率が15%程度にとどまった
 

スマホの登場で風向きが変わった

しかし、スマホの爆発的な普及と、それに伴うモバイルアプリケーションへの投資拡大によって環境が大きく変わり、競合も増えたという。「自社だけで新しい事業分野を作るのは難しいが、セールスフォースのような競合が現れて、我々と同じようなプロダクトを提供するようになって風向きが変わった」とRosadoは話す。
OutSystemsはアトランタ、ボストン、リスボンに拠点を構え、従業員数は現在の750人から年内に1000人まで増やす予定だ。Rosadoによると、同社がポルトガル発祥であることがグローバルな顧客基盤を築く上で役立っているという。現在では「デロイト」や「プルデンシャル」をはじめ、250カ国にまたがる数百もの企業が同社のサービスを利用している。
OutSystemsが事業を世界中に拡大できた背景には、同社の企業文化が大きく関与している。同社は7年前に7つのルールを明文化したが、その最初には「従業員は必要性に疑問を感じる業務について拒否することができる」と書かれている。Rosadoによると、このルールが事業を拡大する上で最も重要なのだという。
「従業員や投資家の忍耐強さがなければ、今頃事業は閉鎖に追い込まれていただろう」とRosadoは話す。同社は、今回調達した資金を使って、ローコード開発を世界中に広めることが可能になった。
Rosadoは17年をかけて自身の考えが正しいことを証明してみせたが、他の起業家には同じ経験をしてほしくないと考えている。「OutSystemsの軌跡から学ぶ点もあるかもしれないが、顕在化しているニーズに対するソリューションを考えることをお勧めする」とRosadoは話した。