高校卒業時の学生が抱えがちなコミュニケーションの課題とは? 4タイプに分けて解説 (1/3)|EdTechZine(エドテックジン)

「コミュニケーション能力はやる気があれば身につく」のか?

まず前提として確認しておきたいことがあります。コミュニケーションの話をしていると「『自分はコミュニケーション能力が高い』と思っている人」から次のようなことを言われます。「○○(名前)はコミュニケーションしようという気持ちがないんだ。自分から話しかけてくることもめったにないし、こちらから話しても最低限の返事しかしない。話が発展しないんだよ」。
さあみなさん、いかがでしょうか? このように思ったことはありませんか? この言葉からは「やる気がないからできない。やる気があればできるのに!」という発言者の気持ちがよくわかります。しかし実際には、やる気だけでコミュニケーションはとれません。もちろんやる気も必要です。でも方法を知らないままで、人とコミュニケーションをとることはできません。
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「私だってそんな方法は学んだことない」という言葉も聞こえてきそうです。その通りかもしれませんし、誰かがさりげなく教えてくれたのかもしれません。または、ご自身で試行錯誤されてきたのかもしれません。ただひとつハッキリしているのは、今コミュニケーションがとれず困っている人に、それも10代後半という身体での理解よりアタマでの理解が進んでしまっている世代に、方法論を示すことなくやる気だけで押しても、成長する可能性は極めて低いということです。
社会で必要なコミュニケーション力と、その育て方とは?
 
 
これから社会に出る大学生に求められるコミュニケーション力とはどのようなものなのか、そして、その「力」(スキル)を彼らにいかに伝え、トレーニングしていくのかを、ひも解いていく連載の第2回をお届けします。前回は、社会で必要なコミュニケーション力について解説しました。今回は、高校卒業時の学生が抱えがちなコミュニケーションの課題を、4つのタイプに分けて紹介します。

学生が抱える「コミュニケーションの課題」4類型

【1】コミュニケーションは得意です。人と話すのも大好き。
このように考えている学生はたくさんいます。一見、何の問題もなく、コミュニケーションにも課題はないように見えます。このタイプの特徴は「自分の言いたいことは話す」ということです。もしかすると、クラスの中でもリーダーシップをとることがあるかもしれません。
しかし、いざリーダーになるとうまくいかないことが多々あります。周囲が協力してくれず、最終的にはリーダーになることを諦めてしまうのです。そして、話を聞いてくれる一部の友だちとだけ話すようになります。
このタイプの人は、話すジャンルに共通点があったり、自分の言いたいことをひたすら聞いてくれたりする相手とはうまくいきます。しかし、そうでない人とのコミュニケーションは難しいケースも多く、学生時代は問題がなくても、社会へ出た際に困ってしまいます。社会人になると「周りの人に話が通じない。だからこの会社はダメだ」と言って転職を繰り返してしまうこともあります。
問題なくコミュニケーションをとれる人と、このタイプの人の違いは何でしょうか? それは「自分の自信のなさを、いろいろと話すことによって隠そうとする」ことです。この「自信のなさを隠す作業」に忙しいため、相手の話を聞く余裕がなくなってしまうのです。相手が話し始めると、聞くのではなく、自分が話すことを我慢する時間となります。そして相手の話が途切れたところで、自分の話を再開するのです。しかし、これは打ち合いであって、キャッチボールにはなりません。お互いに言いたいことを言っているだけの状況です。また、本人は「話を聞いていない」という自覚がありません
【2】コミュニケーションは嫌いではありません。でもいつも聞き役。
こちらのタイプも、一見問題はなさそうです。自分からどんどん話しかけることはなくても、話しかけられれば相手の話を聞くことができる。すてきですよね。
しかしそれが極端になると、ひたすら話を聞き、相づちを打つ様子からは、まるで何かの修行をしているかのような印象を受けます。また話す側も、相手からの反応が少ないので、いつしか話しかけることもなくなってしまいます。「聞き役」といっても、本当に聴いて理解し、それに反応しているわけではないことも多いようです。
そして最大の課題は、このタイプの人が「自分の話をどこまでしていいかわからない」と言うように、自分の話ができないこと、そして、自分の考えを説明できないことです。そして周囲は「あの人が何を考えてるかわからない」と感じるようになります。
ときどき、このタイプの学生には「本当に何も考えていない」というタイプが混ざります。何にも興味がなく、話を受けることだけはできるが、それに対して何か反応するといった感覚が一切ないのです。本人も、自分の希望ややりたいことがわからないと感じていることがしばしばあります。「言いたいこともやりたいこともわからない」と言うだけあって、このタイプの人にも自信はありません。「自分の言いたいことに自信がないから話さない。言って恥ずかしい思いをするなら黙っておこう」と考えているのです。
【3】コミュニケーションは嫌いではありません。一対一なら話せます。
このタイプの人は、大人数になると緊張するため周りの動向を見ています。しかし、一対一であれば自分の意見も言えますし、相手の話も聞けます。
実は、一対一と言っても、自分と話が通じる、同じ意見や環境にいる友だちとだけ話ができるタイプであることも多いのです。「何人か集まれば、違う意見の人がいるかもしれない、そこで自分の意見を言うのは怖い」というのが彼らの感覚です。
大人数になると、声の大きな人の意見に流されていきます。たとえ自分の中によりよいアイデアがあっても話すことはまずありません。これは本人の問題だけでなく、所属するグループに課題があるのかもしれません。「みんなで決めよう」とか「ブレストしよう」と言いつつ、声の大きな人の意見だけが通るグループ、ありますよね。
このタイプの人も、異なる意見を言えるほどの自信はありませんし、自分と異なる意見を理解し、受け入れていく技能を持っているわけでもありません
【4】対面でのコミュニケーションは不得意です。SNSなら話しやすいけど……。
対面ではほとんど発言しないものの、SNSでのやり取りになると、どんどん意見を言う人がいます。これは【3】の人に近いものがあります。理解できる相手とはしっかり話せるのですが、そうでない相手とは対面で話せない。SNSになると相手が目の前にいないからでしょうか、少し大胆に意見を表明します。
この話を聞くと、表立って相手が異なる意見を述べてこなければ、内面でどう思っていても気にならないのではないか、と思わされます。このタイプの人の中には、SNSなどのインターネット上では、対面よりもかなりアグレッシブな発言をする人たちがいます。反対意見に耳を傾けることは難しく、反対意見を持つ人とは争ってしまうことが多いようです。
この人たちも、相手と異なる意見を言う自信はありませんし、自分とは異なる相手の意見を聞き、理解する自信がないと言えます

コミュニケーションの課題は解決できるか?

ここまで、4つのタイプに分けて、高校卒業時に学生が抱えがちなコミュニケーションの課題を見てきました。どこかで見たことがある人もいたのではないでしょうか。もしかしたら「私はこれだ!」と思った方もいるかもしれません。あるいは「こういう人はもう変わらない。変えられない」と思った方もいらっしゃるのではないでしょうか。
そんなことはありません。私の今までの経験から申し上げると「変わりますし、変えられます」。大学入学時、多くの学生は自分の現状を見て「コミュニケーションはこんなもの」と諦めてしまっています。変わりたいと考える学生もいますが、いろいろな書籍を読んだり、コミュニケーション上手だと思われる友人にアドバイスを求めたりする程度で止まってしまいます。なぜでしょうか?
それは、1人だけで変わることが極めて難しいからです。当然ですが、コミュニケーションには「相手」が必要ですし「場」も必要です。この「相手」や「場」の協力がない状況で、1人で変わることはできないのです。逆に言うと、この「相手」と「場」があることにより、コミュニケーション能力は大きく成長します。
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例えば、監督が変わることで強くなるスポーツチームがあります。もちろん、戦術や戦略といった勝つための考え方が改善していることも大きな要因ですが、チーム内のコミュニケーションが活発になったからこそ、チーム全体で戦術・戦略が共有できるようになり、個人の技能が上がったケースもあるのではないでしょうか。
いよいよ次回は、このようなコミュニケーションが不得意な学生が社会に出るまでに、得意とは言わないまでも、相手の話を聞ける、そして、それに対応する形で自分の意見を話せるようにするため、必要なアプローチをご紹介します。アプローチには、個人として学んでもらうことも多いのですが、彼らを預かる「場」として、教育機関にしかできないこと、やらなければならないことも紹介します。どうぞ、お楽しみに!