「目的思考」で学びが変わる—千代田区立麹町中学校長・工藤勇一の挑戦 | 多田慎介

 
教育関係でよく耳にする学校の名前である。斬新な切り口で学校経営を変えている工藤校長の改革の進め方を参考にしたいと思い、この本を手に取った。
中学校は社会で活躍する人材を育てるための場所だ。生徒たちが大人になり、人前で話すとき、聞いてくれない相手を叱る人はいない。だから教員が「校長先生の話をちゃんと聞きなさい」と指導する姿なんて見せてはいけない。話を聞いてもらえないのは校長の責任だ。言葉は相手に伝わることが大事であって、わかりやすく伝えなければ意味がない。生徒たちが「聞きたい」と思うような話をする。ビジネスの場では当たり前のことだ。
本来の勉強の意味とは、生徒たちが「分かる」「分からない」を自覚し、わからないことを分かるようにすることだ。一律に宿題を課せば、既に分かる状態にある生徒に無駄な時間を強いることになる。
方眼ノートは、一つの授業につき見開き1ページを使う。基本フレームは「授業のねらい・結論」「板書」「気づき・疑問」「まとめ・行動目標」そして「要約」の5つ。
生徒には「授業での重要な部分を判断し、要約する。」ことを繰り返させる。これによって、毎回の授業での学びをアウトプットでできるようになり、表現力向上につながる。教員の話をただ漫然と聞いて板書を書き写すのではなく、要約して自分の言葉にまとめ、アウトプットする。工藤校長は「再現性のあるスキル」だと指摘する。